夏・蛍・火垂るの墓

ども。ミロです。
なにげにNHK朝の連ドラ『おひさま』を見ています。

とうとう終戦になり、
陽子の兄・茂樹や隣のタケオ、そして陽子の夫の和成が戦地から帰って来ましたね。

脚本が当時の人の感覚を大切にして書かれているので、
左がかった台詞を聞かされずに済むだけでも快適です。

ようやくまともな戦時中のドラマ化ができるようになったかと、
思いはひとしおです!

夏になり8月が近づいて来ると、
やはり日本人が思い出すのが「戦争」ですね。

これから8月の終戦記念日が来るまで、
「戦争」をめぐっての話題を取り上げて行きたいと思います。

と言っても、昭和32年生まれの私に戦争体験があるわけはないので、
わたしがどう「戦争」をとらえて来たかを語って行きたいと思います。

私が初めて「戦争」というものに意識的に向き合ったのは、
野坂昭如を知った時からになります。


わたしが大学時代のこと、
当時は「中年御三家」と称して、
野坂昭如、永六輔、小沢昭一の3人がコラボを組んで、
歌を通して彼らの戦争体験を、
われわれ「戦争を知らない子供たち」に伝えると言う芸能活動を繰り広げていました。

小沢昭一、野坂昭如、永六輔の武道館コンサート 1974年

私は小説より先に、野坂昭如の「歌」との出会いをしました。

戦後の雰囲気を伝える彼の歌を、2つほど紹介したいと思います。

『野坂昭如 新・古今集』「夏」~蛍
能 吉利人/作詞 桜井 順/作曲 歌/野坂昭如

1.ぼうぼう野っ原に おしゃかさまなんにん
  ぼうぼう野っ原に 電信ばしらなんぼん
  ぼうぼう野っ原に 日が落ちる
 ※水をさがして 草の中
  天の蛍 地の蛍
  天・天・地・地・地
  天・天・地・地・地
  手のなかに消えた
  あついあつい夏の日
  つめたいつめたいほたる

2.ぼうぼう野っ原に やけた瓦なんまい
  ぼうぼう野っ原に 白いきものなんまい
  ぼうぼう野っ原に 風が走る
  ※くりかえし

ユーチューブを探しましたが、
残念ながら「夏(蛍)」の投稿が無かったので、
歌詞だけを紹介しておきます。

野坂昭如『新・古今集』

(2017年1月21日追記)

『チュウインガム・ブルース』

チュウインガム・ブルース
吉田旺/作詞 山本幸三郎/作曲・編曲 歌/野坂昭如

あの頃おれは 十一で
D・D・Tまみれの浮浪児
進駐軍の 顔を見れば
ハングリィ ハングリィ ハングリィと
つきまとってた
チュウインガム チュウインガム
チュウインガムブルース

林檎を盗んで 殴られる
おれをかばって くれたひと
”星の流れ”を 聞くたびに
やさしかったあのひとを おもいだすよ
チュウインガム チュウインガム
チュウインガムブルース

あのひとの名前は リリィさん
駅裏のバラックに 住んでいた
日暮れになると お化粧して
ガードのあたりを いったりきたり
チュウインガム チュウインガム
チュウインガムブルース

リリィさんのくちぐせは いつでも
「私は女の 防波堤」
そうでも思わなきゃ つらいよと
血のような夕陽みて 唄っていた
チュウインガム チュウインガム
チュウインガムブルース

ある朝リリィさんは 焼跡で
捨てられたボロのよに 死んでいた
なあんだ夜の 女かと
ヤジ馬は鼻先きで 笑っていた
チュウインガム チュウインガム
チュウインガムブルース

こんな女に 誰がした
鐘が鳴ります キンコンカン
あの頃の流行歌はやりうた 聞くたびに
やさしかったあのひとを おもいだすよ
チュウインガム チュウインガム
チュウインガムブルース
チュウインガム チュウインガム
チュウインガムブルース

少年時代の野坂昭如が神戸大空襲を生き延び、
疎開先で妹を亡くした体験を持つことは今や有名です。

その体験から生まれた『火垂るの墓』という小説の傑作もあります。

しかし、実際の野坂は小説中の兄とは違って、
自分自身の「飢え」に耐えることが出来ず、
乏しい食料をみずからが食べてしまい、
妹に分け与えることが出来ずに、妹を栄養失調死させてしまいます。

小説の中で、ひたすら妹に尽くし、
最後に兄もまた死んでゆくというストーリーには、
野坂の贖罪意識しょくざいいしきが強く働いていると思われます。

『火垂るの墓』

2020.2.27 元動画削除のため差し替え

私は英語は出来ませんが、
この英語版の動画を見て、
私の乏しい英語の知識でも「泣ける」ことを知りました。

ぜひ、ユーチューブに飛んで、(右下のYouTubeボタンをクリックするだけです)
この動画に寄せられた数多くの英語のコメントをご覧ください。

Google翻訳に、コピー・アンド・ペーストすれば
英語は分からなくとも、おおよそどんなことを言っているかがわかります!

アメリカの若者たちの多くが、
この動画を見て、みんな泣いてます。

高校の歴史の授業に、
絶対このアニメを取り入れるべきだと言ってる人もいます。

『火垂るの墓』の原作にもアニメにも、イデオロギーはありません。
作者の体験と妹への追慕が切々と語られているだけです。
それだからこそ国を超えて、かつての敵国の人々にさえ、
強く訴えかける力を持ったのだと思います。