日本最初の長編アニメ『桃太郎の海鷲』

ども。ミロです。

前回は「太平洋戦争開始1周年記念」として海軍省からの要請で製作された、
円谷英二の特撮が冴えた映画『ハワイ・マレー沖海戦』を紹介しました。

真珠湾奇襲攻撃に関することは「軍事機密」だったのですが、
じつは1周年後に映画が公開された頃には、
すでにミッドウェイ海戦の敗北により、
大日本帝国海軍の機動部隊は主力空母の多くを失い、
ほぼ壊滅状態となっており、
もはや秘密にしておく当の本体がこの世から失われていました。

しかし日本国民には知らされていませんでした。

じつは『ハワイ・マレー沖海戦』の製作と同時に、
海軍省はもう1本、アニメで真珠湾攻撃を題材にした作品の製作を依頼していました。

それが『桃太郎の海鷲』です。

『桃太郎の海鷲』(昭和18年・1943年)〈全編〉

5巻37分の作品を、
瀬尾光世氏がたった4人のスタッフで、たった3カ月で完成させました。

桃太郎の司令官が航空母艦で、航空戦闘員のサルやキジを引き連れて、
鬼が島を急襲し、青鬼艦隊を爆撃するというもの。

日本で最初の長編アニメーションであり、
日本で最初の航空マンガ映画でした。

ただこちらのフィルムもご多聞にもれず、
戦後GHQに接収されてしまったきり日本に帰って来てないようで、
もう実際に目にすることは出来ないのかな?と思っていました。

ところが、このたびアメリカのWEBショップで、
この作品が収録されたDVDを販売をしているのを見つけ、即注文し、
ただいま商品の到着を待っているところです。

到着したら、あらためて紹介したいと思います。
けっこう高い買い物だったな。(汗)

アニメ大国日本のさきがけ的な本作品を、
日本政府はアメリカ政府に返還請求をしてはいかがでしょうか?
日本人みんなが見られるようにする文化的責務があると思うけどな。

きょうは、『桃太郎の海鷲』の姉妹作品といわれる、
同じ瀬尾光世氏の作品『桃太郎 海の神兵』(1945年)のほうを紹介したいと思います。

『桃太郎 海の神兵』(昭和20年・1945年)〈全編〉

こちらの題材は真珠湾攻撃ではなく、
インドネシアのセレベス島を急襲した海軍落下傘部隊の活躍を、
桃太郎童話のスタイルを借りて再現するというものです。

全編流れるようなテンポの良い動きで、
ミュージカル仕立てで楽しめる作品になっています。

圧巻は、動物たちが野外の教室で歌う「アイウエオの歌」ですね!
一度聴いたら忘れられなくなります!
作曲の古関裕而、ここでもいい仕事をしてますね!

日本と南洋の動物たちの柔らかな動きが、
それと対照的な、
桃太郎と彼の率いる落下傘部隊員たちのきびきびした動きを際立たせます!

最後は、桃太郎が白人将校に無条件降伏を迫りますが、
山下奉文将軍の「イエスかノーか」を思わせるシーンでした。

しかし、ふにゃふにゃしたおかしな白人兵たちの手足の動き、
どこかで見たような?と思っていたら、
『アンパンマン』のオープニングでたしかこんな感じのが出てました。

敗戦の年の春、手塚治虫がこの『桃太郎 海の神兵』を神戸の焼け残った映画館で見て、感激のあまり泣いてしまい、
「おれは漫画映画をつくるぞ」と決意した作品でもあります。(手塚治虫『ぼくはマンガ家』

戦前・戦中の日本アニメって、ブラックボックスだな。
まだまだ面白い作品がありそうだ。
「てんてん てんとう虫 おてんとうさまの子
 お花をのぞいて おはようさん…」とかね。