送襟絞──新井千鶴VSタイマゾワ【東京オリンピック2020】

新井あらい千鶴ちづるVSマディナ・タイマゾワの一戦は、戦慄物でしたね!
新井の送襟絞おくりえりじめにタイマゾワがめ落とされて、16分41秒という長い勝負に決着がつきました。
オリンピック柔道で絞め落とされる光景というのは見たことがなかったので、この準決勝の動画を探してみました。

新井千鶴VSマディナ・タイマゾワ(準決勝)

こちらから新井千鶴VSタイマゾワの準決勝の戦いが、ノーカットで見られます。
16分41秒の死闘をご覧ください。
↓  ↓  ↓
https://tver.jp/tokyo2020/video/6265578723001

やはりゴールデンスコア(延長戦)に突入して、長時間の対戦になった結果だったろうな。
疲れ切っていなかったら、簡単には送襟絞おくりえりじめが入ったりはしないだろう。
国内の大会では、けっこう絞め落とされる例があるようだが。

[送襟絞 / Okuri-eri-jime]講道館

講道館が公式チャンネルで「送襟絞]の解説をしているのであげておきます。

わかりやすいですね!
でも、実際の試合では、相手も絞め技に来るのを警戒して防御姿勢を取るので、どんな風に攻めているのかテレビで見ているだけではわかりません。

もう1本、「送襟絞」についての解説動画をどうぞ!

【寝技研究会】送襟絞の応用と対処

準決勝戦の後、新井千鶴は決勝戦に臨み、プエルトリコのマリア・ペレスをくだして金メダルを獲得しました。
新井に破れたROC(ロシア・オリンピック委員会)のマディナ・タイマゾワも、3位決定戦でクロアチアのバルバラ・マティッチを破って、銅メダルに輝いています。

「活法」と「殺法」

私は高校生の頃、授業でやった程度しか柔道の経験はありません。
そのとき、柔道の先生が実際に一人の生徒を絞め落として見せ、「活」を入れて意識を回復させるのを見ました。
柔道では絞め技で意識が消失することを「落ちる」といいますが、「落ちる」まではほんの一瞬です。

そのとき「活」の入れ方を教わりましたが、テレビや映画でやるような、腰に膝小僧を当てて「エイッ」とやるようなことは、絶対やってはいけないと言われました。
全身の力が抜けている状態でそんなことをしたら、一発で背骨がポキッと行くということでした。

正しいやり方は、腰のあたりに膝小僧を当てたら、優しくコリコリと回転させるようにすると、そのうち意識が戻るということでした。

こういう「活」の入れ方を「活法かっぽう」と言います。

絞め技をすぐに解きさえすれば、10秒から10数秒で自然回復しますが、「活法」はその回復時間を早くするためのものです。
絞め落とされたタイマゾワも、肺のあたりをマッサージしたり両足を持ち上げたりの「活法」を施され、すぐに意識を取り戻して、両脇から支えられながら、自分の足で歩いて退場していきました。

活法かっぽう」(蘇生法)は柔術諸派が「殺法さっぽう」(攻撃法)とともに編み出して秘伝として伝えて来たもので、内容も様々ですが、夢想流、楊心流、心明活殺流、起倒流、渋川流、天神其場流、天神正伝真随一念流、扱心流、浅山一伝流、天神真楊流 等の「活法」が伝わっています。

やはり柔道の授業で、二人一組で向かい合って座り、お互いに相手の柔道着の襟を取って、「締めろ!」のかけ声とともに思いっきり締め合ったことがあります。首筋が痛かっただけで、誰も落ちたりはしません。

つまり絞め技というのは、力づくで締めればいいというものではなく、襟を握った手をちょっと捻っただけで(持手をかえすと言います)絞めが入り、落ちます。
窒息させるわけではなく、頸動脈を襟で圧迫して血流を止めることで、脳への酸素供給が妨げられ、意識消失するのが「落ちる」という現象です。

『姿三四郎』右京ケ原の決闘(第8話)

『姿三四郎』右京ケ原の決闘

こういう風に、よく見えるようにめ技をかけてくれると、分かりやすくていいんですけどね。笑

檜垣源之助が右京ケ原の決闘で姿三四郎にかけた技は、原作では「逆十字の立て絞め」と書かれてます。

三四郎は急速に意識が遠のいてゆき、快感さえ感じるようになって、あと10秒ほどで絶息するというところまで追い詰められます。
だが、そのとき檜垣は、三四郎を絞め殺そうとして、襟を握り直そうとした一瞬の隙に、三四郎の右腕が檜垣の十字に組んだ腕の間に入ります。三四郎の左手は檜垣の袖裏にかかり、腕の中から三四郎が消えたと思った瞬間、三四郎の「山嵐」が檜垣を襲い、檜垣の体は虚空を飛んでいました。

この決闘の様子は、『姿三四郎』第8話でご覧ください。
↓  ↓  ↓
『姿三四郎』第8話