【速報】『拝啓天皇陛下様』渥美清主演、BS松竹東急で放映!──『可愛いスーチャン』の世界観で描かれた戦争映画

2024年8月19日(月)夜8時から10時3分、BS松竹東急渥美清主演の『拝啓天皇陛下様』(1968年4月28日封切)が放映される! テレビで放映されるのは何年ぶりだろうか? お見逃し無いよう、お知らせする次第だ。

親愛なる陛下!軍隊は天国であります!

小説家・棟本(長門裕之)のインテリの眼と、ヤマショウこと山田正助(渥美清)から見た「軍隊」が描かれる。ヤマショウは私生児で、母親とも幼くして死に別れ、ろくに小学校へも行けなかったので、字を書くことも読むことも不自由だった。そんな彼に、三度三度の食事を与えてくれ、給与までくれる軍隊はまさに天国だった。

この映画は、消灯ラッパが鳴り響くシーンから始まり、初年兵をいじめる二年兵(西村晃)が出て来たり、門限を破った正助が重営倉に入れられたりと、まさに軍歌『可愛いスーチャン』の世界観そのままに軍隊が描かれている。日華事変が起こる前の、日本の軍隊の姿だ。

エリート層の小説家が書くような、上から振りかぶった軍隊批判はここにはない。あくまで山田正助という社会の下層にいる庶民を通して、真面目であればあるほど滑稽な、軍隊の生態系が描かれるだけだ。そこが小気味よくも魅力的な戦争映画になっている。

満期除隊するヤマショウ。左は「戦友」にして読み書きの先生の柿内。

寝床が隣同士のものを、軍隊では「戦友」という。二年兵になった正助は、中隊長の命令で、「戦友」の元教師だった初年兵の柿内(藤山寛美)から、読み書きを習うことになる。

秋季大演習を統裁する天皇陛下が現れた。ヤマショウは初めて天皇陛下を見た。

秋季大演習で、天皇旗の後に続いて、白馬に乗って現れた天皇陛下。正助は、初めて天皇陛下の顔を見た。

ようやく読み書きを覚えたばかりの正助は、天皇陛下に手紙を書く。蒋介石の和平使節が東京に来ているという怪情報が流れ、戦争が近く終わるという噂が立ったためだった。戦争が終わるなんて、冗談ではない! こうなったら、天皇陛下に直接お願いするしかないと正助は思ったのだった。

天皇陛下に手紙を書くヤマショウ。

敗戦後、小説家・棟本や正助が、貧困にあえぎながらも少しずつ生活を再建していく姿が描かれる。この部分は、正直に言って、映画よりも原作の小説の方が、当時の作者や庶民の生活が詳しく書かれていて断然興味深い。

原作は棟田むねたひろしの『拝啓天皇陛下様』。『週刊現代』の昭和37年4月1日号から10月14日号まで連載された作品である。

棟田は、戦前に軍隊に入隊して、昭和12年(1937年)、予備役の時に日華事変が勃発、その後演習招集がかかって応召している。この頃、まだ棟田は実戦を経験していない。後備役兵は「おっさん」、予備役兵は「あんちゃん」、現役兵だけが「兵隊さん」と呼ばれた。棟田はこの時、「あんちゃん」だった。その後は、徐州作戦に参加して負傷、大東亜戦争が始まるとまた召集され、インパール作戦など南方戦線に従軍している。

嬉しいことに、『続・拝啓天皇陛下様』(1964年1月1日封切)も、翌日、同時間帯で放映されることが決まっている。実際のところ、続編とは言えない全く違った物語になっているのだが、主人公は前作のDNAを受け継いでいるので、同じ世界観の物語が楽しめる作品になっている。棟田博の『拝啓天皇陛下様』と『軍犬一等兵』がこの映画の原作になっているようだ。

こちらは山田洋次が脚本に参加している。

このあともBS松竹東急では、「『男はつらいよ』55周年記念 渥美清特集」として、渥美清の初期喜劇映画が続々と登場予定だ。
なかなか観ることができない作品ばかりなので、映画ファンは見逃さないでね!

<放送予定>
8月19日(月)『拝啓天皇陛下様』
8月20日(火)『続・拝啓天皇陛下様』
8月21日(水)『拝啓総理大臣様』
8月22日(木)『喜劇 急行列車』
8月23日(金)『喜劇 団体列車』
8月24日(土)『喜劇 初詣列車』