11月になると僕の茸狩り場は、
水源地帯の沢からだいぶ下流の「河川敷」へと変わる。
ここにもたくさんの倒木がある。
ただし、ブナやミズナラではなくて、ヤナギがほとんどだ。
これは標高の違いによる。
木が変われば、そこに生えるキノコも違ってくる。
写真を見てわかりますか?
じつはこれ、エノキタケなんです。
そう、すき焼きとか煮物に入れる「ナメタケ」ともいうやつ!
あれはもう、天然物とくらべると「もやし」としか言いようがないシロモノだ。
美味しさが全然違う。
立ち枯れの木に出たやつは、写真映りはいいけれど、小さいのが多い。
傘の直径で2~3㎝くらい。
それにくらべると半分土砂に埋まった木に生えているやつの方が、
栄養状態がいいのか4~8㎝と大きくて立派なのが多い。
生える場所によって、
エノキタケは姿形や色が「本当にこれ同じキノコ?」ってくらい違いがある。
図鑑に載っている標準的なエノキタケは、
ややオレンジ色がかったレモン色の傘に、黒ずんだビロード様の細い柄が特徴だが、
土に埋まっていると柄が太くて白っぽくなることが多い。
じつはこのエノキタケ、
秋から初冬まで寒い時期によく採れる、貴重なキノコなのだ。
しかも奥山から庭先まで出る場所を選ばない。
都会の公園などにも出るそうなので、
適当な枯れ木さえあれば身近なところでキノコ狩りができるのだ。
収穫を稼ぐには、ここでも「乞食の眼」が物を言う。
何かいいもんが落ちていないか、地面をくまなくスキャンして行く、
必殺というより必死な「眼」である。
木の上で採れたら下の方も見るとか、
手前面にぞっくり生えていたら反対側に回ってみると、そこにも同じように生えているものである。
結局、きょうも背負いカゴに半分ほどの収穫があった。
鍋物がおいしい季節である。
天然のエノキタケが入った鍋は、味も格別だ。
晩酌もすすみそうである。