ガートルード・ジーキル Gertrude Jekyll

植物を育てるのが上手な人を、

have a green fingers「緑の指を持っている」と英語では表現します。


このブログのタイトルの半分もそこから来ています。


きょうから始める《“緑の指”図書館》では、

花やガーデニングに関係のある本を取り上げていきたいと思います。



ガートルード・ジーキル(1848~1932)という人をご存知でしょうか?

ガーデニング・ファンならどこかで一度は聞いたことのある名前だと思います。


女性ガーデン・デザイナーの草分け的な存在で、

建築家エドウィン・ラッチェンスと組み、

独自の「カラー・スキーム理論」を打ち立てながら

花を中心にした庭を200以上も造ったと言われています。


残念ながら、それらの庭のうちの幾つかが残っているばかりで、

大部分は失われてしまったようです。

残っている庭は、イギリスのナショナル・トラスト運動によって

かろうじて残されたのでした。


ジーキル女史の作る庭の特徴は、

植物の形(フォルム)、質感(マチエール)、色彩(カラー)、

そして咲く時期などの取り合わせを、

細部まで綿密に計算して設計されていることです。

また、一年草よりも宿根草を多く使っているようです。


今日、コテージ・ガーデンとかイングリッシュ・ボーダーと呼ばれる造園手法に、
彼女の影響が色濃く反映しています。


「理論」さえ残っていれば、現物はなくなっていても、

庭のエッセンスを再現することは可能なのですね。



ジーキル&ラッチェンスが手がけた庭で、

ヘスタークーム・ガーデンというのがあります。

1970年代当時は荒れ果てたままだったのですが、

ジーキルのオリジナル・プランが見つかったことから、

当初指定されていたとおりの植物を使って復元されました。


人工の構築物はそのまま放置せず、かならず一緒に植物を植え込み、

そのコンビネーションで自然の風景に溶け込ませることが、

彼女の手法だったように見受けられます。


ところで彼女の「カラー・スキーム理論」ですが、

いまだに彼女の著作がまるごと翻訳出版されたことはないみたいです。

私は彼女の紹介者たちが触れているのを読んだだけで、

残念ながら直接著作を読んだことはありません。


イングリッシュ・ガーデンブームのキイ・パーソンなはずなのに、

これはどう考えてもあり得ないことです。

なにかブームの微妙な底の浅さが露呈しているような気がするのは

私だけでしょうか?


より深く理解するには、直接当たってみるに限る!というのが私の持論です。


誰か英語に弱い私のために、翻訳出版してくれる人はいませんか?



翻訳で思い出しましたが、ガートルード・ジーキルを初めて知った頃、

彼女の名前の表記が定まっておらず、どれを信じていいやら悩んだものでした。


ガートルード・ジックル


ガートルード・ジェキル


ガートルード・ジークル などなど。


また彼女の相棒のエドウィン・ラッチェンスも、


エドウィン・ラティヤンス


とか書かれたりしてましたから、

「ぐわああ。どれが本当なんだああ!」と頭を抱えるしかありませんでした。


「ギョエテとは 俺のことかと ゲーテ言い」が、


まさか現代にまで出現するとは思っても見ませんでした。


スティーブンスンの小説で『ジキル博士とハイド氏』というのがあります。

じつはガートルード・ジーキルの弟とこの作家が友達で、

「ジキル博士」という名は彼女の弟から取ったものだと言うことです。


とすると、ガートルード・ジキルとかジーキルくらいが、

実際の発音に近いのかも知れませんね。