丘 灯至夫さん逝く、大好きな歌をありがとう!

作詞家・丘 灯至夫さんが昨日亡くなりましたね。

わたしもかなりのファンだったし、
いまだに私が一番好きな歌の作詞者が丘 灯至夫さんなので、
92歳までごくろうさまでしたというのが自然な気持ちです。

舟木一夫『高校三年生』『修学旅行』、
中学の修学旅行ではとバスのガイドさんが教えてくれた『東京のバスガール』など、
あったかい気持ちにしてくれる歌が多かったなあ。

その中でも、
「花王愛の劇場」というテレビの昼ドラのシリーズでなぜかよく見ていた、
『智恵子抄』の主題歌も丘さんの作詞で、すごく好きでした。

当時マンガ少年だった私が、
少しづつ文学にかぶれていったきっかけのひとつでもありました。
画像をクリックしてお聞きください。

コロムビア・ローズ(二代目)『智恵子抄』 1964年(昭和39年)

智恵子抄
作詞/丘灯至夫 作曲/戸塚三博 歌/コロムビア・ローズ

東京の空 灰色の空
ほんとの空が 見たいという
拗ねてあまえた 智恵子
智恵子の声が
ああ 安達太良の山に
今日もきこえる

千代紙が好き 折り鶴が好き
故郷の空へ 飛ばすという
願いひとすじ 智恵子
智恵子の夢が
ああ 安達太良の山に
今日も羽ばたく

まごころの花 純情の花
散らない花が 欲しいという
黒い瞳の智恵子
智恵子の姿
ああ 安達太良の山に
今日も生きてる

丘 灯至夫さんの出身地は福島県田村郡小野新町。
昭和の文化人の中には、福島県出身者がたくさんいますね!

作曲家の古関 裕而も福島県福島市出身だし、
特撮の神様・円谷英二は福島県須賀川市出身です。

最近で思い出すのは、
結婚が報じられている伊東美咲が福島県ですね。

丘 灯至夫さんは歌謡曲のほかにも、アニメの主題歌の作詞もたくさん手掛けています!

『ハクション大魔王の歌』
『みなしごハッチ』
『けろっこデメタン』
『紅三四郎』などなど。

じつは、わたしがいまだに一番好きな歌というのも、アニメの主題歌なんです。
丘 灯至夫・作詞、古関 裕而・作曲の福島県コンビの傑作です!

この歌を私は、苦しい局面に立たされたときなんか、よく口ずさんでしまいます。
タツノコプロダクション製作のアニメンタリー『決断』の主題歌です。
お聞きください。

アニメンタリー『決断』オープニング

人生で
最も貴重な瞬間
それは
決断の時である

太平洋戦争は
われわれに
平和の尊さを教えたが
また
生きるための教訓を
数多く のこしている

決断
作詞:丘灯至夫 作曲:古関裕而

智恵をめぐらせ 頭をつかえ
悩みぬけぬけ 男なら
泣くも笑うも 決断ひとつ
勝っておごるな 敗れて泣くな
男 涙は 見せぬもの

つらい時には 相手もつらい
せめか守りか 腹一つ
死ぬも生きるも 一緒じゃないか
弱気起こすな 泣き言いうな
のるかそるかの 時だもの

右か 左か 戻るか行くか
ここが覚悟の 決めどころ
勝つも負けるも 決断ひとつ
一度決めたら 二の足踏むな
俺もゆくから 君も行け

アニメンタリーというのは聞きなれない言葉だと思いますが、
アニメ+ドキュメンタリーの造語で、
太平洋戦争をドキュメンタリー・タッチのアニメで描くという画期的な試みでした。

原作・監修は太平洋戦史研究の第一人者・児島襄です。
日米双方の資料をもとに、
一つ一つの作戦を日米双方の視点から描き、
勝敗を分けることになる個人の「決断」に焦点を当てて描いた作品です。

このアニメ製作を通して、
タツノコプロダクションは現場の必要からいろいろなアニメの新技術を開発して行きますが、
それは次回作『科学忍者隊ガッチャマン』で花開くことになります。

タツノコプロの総帥・吉田竜夫は、
『大空の誓い』という加藤隼戦闘隊を舞台にしたマンガを連載したりして、
ぼくらマンガ少年のあいだでは、
戦記マンガの分野では大人気の存在でした。
(この部分、覚え違いをしてました!『大空のちかい』の作者は弟のほう、久里一平でした。吉田竜夫は『少年忍者部隊月光』をあげるべきでしょうね!)

そこに大物コンビによる主題歌と、
アニメ・ファン、ジャズ・ファンにはおなじみの越部信義 による音楽が加わって、
アニメ史上に残る傑作ができたと思うのですが、
当時の市民運動家とマスコミの偏向したイデオロギーによって潰されました。

いまではDVD全集が出たりして、
ようやく名誉回復されつつありますが、
日本アニメ史の欠落部分を知るためにも、
また太平洋戦史入門としても、
ニュートラルな史観で学ぶことが出来るいい作品だと思います。

「決断」1曲を残してくれただけでも、
わたしは丘 灯至夫さんに「ありがとう!」と言わねばなりません。