ただいま仙台市博物館では「東日本大震災復興祈念特別展」として、
『奈良・国宝 室生寺の仏たち』というのを7月4日から8月24日までやっています。
ありがたいことでございますね。
「女人高野」として有名な奈良の室生寺から仏様の大軍団が、
悩め迷える衆生を救いに仙台の街に大挙してやって参りました!
わたしもさっそく駆けつけてお目にかかって来ました。
久々の仙台でしたが、
とにかく青葉通りを青葉城方面に行けば仙台市博物館にたどり着けるだろうと、
行き当たりばったりで車で出かけたところ、
その青葉通りに出る前になにやら「迂回路」の看板があちこちに立っており、
いつの間にか青葉山の上の東北大学構内に出てしまっていました。
東北放送の前を通りお霊屋の方まで降りて、
広瀬川で鮎釣りをしている人を眺めながら、
ぐるっとひとまわりして、ようやく青葉通りに戻ってきました。
やれやれ。
仙台市博物館の駐車場が無料なのはありがたい。
特別展の会場は2階です。
受付でチケットを購入すると、
「会場内での写真撮影はご遠慮ください」と言われた。
わかってますよーーだ。
いちおう皆に言ってるようだったから、言う方も大変だ。
古文書やら絵図やら仏具やら、
こまごましたものもたくさんあったが、
こちらの目当ては何と言っても国宝の仏です!
いきなり来ました!
国宝「釈迦如来坐像」です!
会場の入り口で出迎えてくれます。
もう、後ろから前から、右から左から舐めまわすように見ちゃいました。
後ろはちょっと見にくかったですが。
鼻がくっきりと高かったです。
ちょっと日本人離れした感じです。
もっともお釈迦様ですからインド人なわけですが。
当時はインドではなく天竺ですね。
平安時代(九世紀)の作です。
懐の深さというか、
まるごとこちらを受け止めてくれそうな、
おおらかさを感じさせる仏でした。
もとは樹の塊にすぎなかったのにね。
技というのは極めると恐ろしいものです。
会場内に入っていくと、
暗闇のあちこちに「仏」とそれを守る「十二神将」たちがライトに浮かび上がっています。
みうらじゅんがホログラムみたいだといってた展示法です。
十二神将が身に着けている古代中国風と思われるアーマー(鎧)がけっこうバリエーションがあって、
ひとりひとりが皆個性的で、表情も豊かです。
どれもヤンキーみたいに凄んだり見えを切っているのがおかしい。
あたまに干支の動物がくっついてるのもおまぬけな感じがして憎めない。
この十二神将は鎌倉時代の作で、仏たちよりは新しい。
重要文化財です。
そして一番見たかった国宝「十一面観音菩薩立像」が、
奥の壁側の真ん中あたりに立っていました。
頭の上に十一の顔を乗せているシュール極まりない観音様です。
チラシの写真の仏がそうです。
平安時代、九~十世紀の作。
この観音に祈ることで、
十種の現世利益と四種の来世利益が得られるのだそうです。
「西遊記」で有名な玄奘・三蔵法師が言っていることなので間違いないでしょう。
全体が2メートル近くもある大きな観音様ですが、
ほっそりした面差しや伏し目がちなまなざしで「女性的」と言われます。
女人高野にふさわしい仏ですね。
十一面観音の手を見ていたら、なんか小さくてぷっくりしているんです。
あッと思いました。
(お袋の手だ!)
こみ上げて来るものがあり、
(ヤバい!)と思ってあわてて十一面観音から離れました。
お袋が亡くなった時、私はひとりにしないようにずっとお袋の右手を握っていました。
まじまじとお袋の手を見ると、思いのほか小さくてぷっくりとしていました。
呼吸が止まった時、「お母さん、お母さん!」と呼びかけると、
ぐっと私の手をにぎるやほどけるように力が抜けて行きました。
ああ、お袋はもう私のいる世界から別などこかへ行ってしまったんだと思いました。
十一面観音菩薩の手はあの時見たお袋の手をしていた。
この観音を彫った仏師は誰か実際に女性の手をモデルにして彫ったのだろうか。
・・・・・
最後に、『奈良・国宝 室生寺の仏たち』の開幕日に行われた、
ご存知『見仏記』でおなじみのみうらじゅん&いとうせいこうのトークショーがこちらから見ることができます。
仏像大使 みうらじゅん&いとうせいこう トークショー