[速報]幻の映画『ひろしま』、8月17日 NHKにて放映! 見たら?

映画『ひろしま』が、8月17日 0時より(金曜日深夜)、NHK Eテレで放映される。

終戦から8年目、GHQの占領が終わったばかりの広島で、映画『ひろしま』は撮影された。
出演者数8万8000人、広島の被爆者も多数参加して、実際に被爆したときの衣服や生活用品や瓦礫を持ち寄り、
原爆が投下された直後の広島が再現された、空前絶後といっていい映画である。
こんな映画はもはや撮られることはないだろう。

1951年、被爆した児童たちの手記を集めた書籍『原爆の子』が出版され、
映画にして残してほしいという被爆児童の訴えから、映画『ひろしま』は生まれた。
撮影資金は「日本教職員組合」(日教組)が、50万人の会員からカンパを集めて準備した。

日教組と聞くと、「共産主義」とか「社会主義」とか「アカ」とかを連想する人もいるだろうと思う。
たしかに、日教組はその生まれからして、GHQがまだ日本国の弱体化を推し進めていた時期(1947年)に、GHQの後押しで生まれている。

イデオロギー的に受け付けないという向きもあるかとは思うが、
しかし、映画作品としては、機会があればぜひ一度は見ておきたい作品だと思う。

うかつであったが、私はこの映画の存在を知らなかった。
どこかで主演の月岡夢路が写っているスチールを見たような記憶はあるが、
その時は大した興味も抱かないまま見過ごしたように思う。

それが、先日放送されたNHKの『ETV特集「忘れられた“ひろしま”~8万8千人が演じた“あの日”~」』という番組で、いくつかのシーンを実際に見ることができ、これは画面の訴える力がただ事ではない、と感じた。




制作資金を日教組が集めたとはいえ、
実際に作ったのは監督であり、脚本家であり、出演者たちだ。
まずは、一度見てから、公正に判断を下すべきだと思う。
また、日本人なら一度は見ておくべき映画だと思ったので、ここでお知らせすることにした。

アマゾンでもこの映画のDVDは現在品切れ中なので、見たいと思っても見ることのできない映画になりかねない。

私は「反核」とか「平和」とかのイデオロギーを前面に出して作られた映画は好みではないが、
映画『ひろしま』が描き出す原爆のリアリズムは、イデオロギーを超えるだろうとも思っている。
なにしろ、上映時間104分のうち、30分以上を原爆描写に使っているという映画なのだ。

映画が完成当初、松竹系の映画館で公開予定だったが、
出来上がって試写を見たら、内容が反米的すぎるとして、松竹が手を引いてしまった。

その結果、映画『ひろしま』は自主上映してくれる映画館で細々と上映されただけで、
広島市民でさえろくに見ることもなく、忘却された幻の映画になってしまった。

GHQ占領中は、プレスコードやピクトリアルコードというのが設定されていて、
第二次世界大戦の戦勝国(米国・英国・ソ連・中華民国)を批判したり、
GHQの動向を詳細に報道することは、新聞・雑誌・ラジオ・映画等に対して発表が禁止されていた。
原爆を真正面から取り上げたりすることも、GHQは許さなかったので、
占領期間中の日本国民は、原爆被害の実態は知らなかったのだ。

占領が終わっても、日本人がGHQの洗脳から覚めるには、さらに長い年月が必要だった。

『ひろしま』制作スタッフ
【監督】関川秀雄
【出演】岡田英次,月丘夢路,神田隆,山田五十鈴,加藤嘉,利根はる恵
【原作】長田新・編『原爆の子』
【脚本】八木保太郎
【音楽】伊福部昭

おお! 音楽は『ゴジラ』(1954年)でおなじみの伊福部昭だ。
これも楽しみだ。


『ひろしま』 1953年(昭和28年)

じつは、映画『ひろしま』と同じように、
映画が完成しながら、日本国民が自由に見ることができなかった映画がまだある。

『樺太1945年夏 氷雪の門』(1974年)がそれだ。

1945年8月20日
昭和天皇が「終戦の詔勅」においてポツダム宣言の受諾を発表してから5日後のこの日、ソ連軍は日本領の樺太からふと真岡まおかに侵攻し、住民を虐殺した。

この映画は、樺太・真岡郵便局の女性電話交換手九名が自決するまでを描いたものだが、当時、ソ連からクレームがついたと新聞報道され、公開ができなくなった。
真相はいまだにはっきりしないが、その後上映はされるようになったものの、日本国民に知られているとは言い難い作品になってしまった。

NHKにはぜひ、次は『樺太1945年夏 氷雪の門』の放映をお願いしたい。