「戦後70年」──わたしの「歴史認識」

はじめに

予告しておいたとおり、
「戦後70年」というカテゴリーを新たに始めようと思うのですが、
なぜ、このテーマについて語るのか?
最初にそれを確認しておきたいと思います。

先の戦争の歴史に端を発する諸問題が、
戦後70年になってもいまだに蒸し返されているという、
現実の状況があります。

慰安婦問題、南京戦虐殺問題、強制労働問題、尖閣問題、竹島問題、靖国問題、国歌・国旗問題、旭日旗問題、教科書問題、沖縄問題…

それはなぜなのか?
われわれはどのように対応するべきなのか?
…わたし自身、自問自答を繰り返してきました。

また、それとは別に、
私自身がずっと抱き続けている「問い」があります。

「太平洋戦争」は間違った戦争だったのか?
なぜ日本国は諸外国に対して、はっきりと主張できないのか?
日本はほんとうに独立国なのか?
日本国はどういう国になるべきなのか?

ある程度の答えを得た「問い」もありますが、
まだ、確証を得るだけのものが見つけられない「問い」もあります。

仕事を持っているので、
そういう「研究」もしくは「勉強」に割ける時間は限られていました。
大抵の人は似たようなものでしょう?

新聞や雑誌に目を通したり、書籍をもとめて読書を重ねたり、
テレビの討論番組やドキュメンタリー番組を見たり、
インターネットで検索しまくったり、
わたしにできることをやって来ました。

しかし、こちらの認識が「不完全な」状態であっても、現実は待ってはくれません。
つぎつぎに「問題発生」がメディアによって報じられ、
そのときどきに最善と思われる決断をしていくしか無いのが人生です。

「戦後70年」カテゴリーでは、
この「不完全」ではありますが、いま時点でわたしが得られた「歴史認識」を、
書き残しておく場にしたいと思っています。

そして、もし「同じ問題意識」を共有してくれる方が現れたら、
それは望外の幸せというものです。

GHQの日本占領に「日本戦後史」の秘密がある!

…それがいろいろ読書を重ねて得た、わたしの結論でした。

GHQの日本占領とは、具体的に何をやっていったのでしょう?
日本の民主化? 五大改革?

日本のメディアには、それについてのたくさんの情報があります。
しかし、メディアを通して知れば知るほど、じつは「実態」から遠ざかるという、
ここには認識の罠が張り巡らされています。

それこそがGHQによる「日本占領政策」の恐るべき「仕掛け」だったのです!

GHQ [General HeadQuarters,the Supreme Commander for the Allied Powers]
連合国軍最高司令官総司令部

GHQの内部には、「普通の人間」と「透明人間」とが存在していました。

GHQの組織には様々な部局がありましたが、
ここで注目したいのは、
民間情報教育局(CIE)と民間検閲局(CCD)の存在です。

私が「透明人間」と呼んだのは「民間検閲局」(CCD)のことです。

民間検閲局のミッションは、
新聞・雑誌・ラジオ・映画・演劇等、日本のあらゆるメディアの検閲を通して、
日本人の反GHQ的な言動、封建主義的な思想、いっさいの軍国主義的な文化を、
日本国民の目から覆い隠すことでした。

プレス・コード、ラジオ・コード、ピクトリアル・コードを設定し、
抵触する記事・台本・写真があれば、
その一部または全部を削除させて発表させていました。

民間検閲局の存在は、
直接支配・統治を受けるメディア関係者にとっては「半公然」の存在でしたが、
一般国民にとっては、完全に「秘密」の存在でした。

日本国民はそれとは知らないで、GHQに情報コントロールされていたわけです。

もう一つ、民間検閲局の重要な仕事は、
通信(手紙等)・電信(電報)・電話の検閲でした。

占領下では、一般人の手紙や電報が開封され、
GHQに対する世論の動向がわかるデータが集められたり、
戦争犯罪人に関する情報などが集められたりしていました。

一方、「民間情報教育局」(CIE)の方のミッションは、
日本人の「頭の切り換え」と「再教育」のための宣伝・宣撫工作であり、
メディアを使って「戦争罪悪感」を日本国民に植えつける工作活動がなされました。

連合軍最高司令官マッカーサーは、
この民間検閲局民間情報教育局を巧みに操り、
日本人に軍部への不信感を植え付けるとともに、
戦前まで日本人が持っていた文化と価値観をみごとに破壊し、
アメリカ流の「民主主義」と「人権思想」を植え付けることに成功しました。

GHQの「日本弱体化」計画

連合国軍最高司令官 ダグラス・マッカーサー

占領軍が日本に進駐してきて、日本軍の徹底的な「武装解除」が行われました。
マッカーサーは占領にあたり、武力で抵抗されることを何より恐れていました。

残っていた飛行機は全て焼却され、艦船は沈められました。
「戦艦・長門」なんて、原爆実験の標的艦にされて消されました。

降伏当日の日本軍の戦力──
陸軍 154個師団、その他36個師旅団
海軍部隊 20個部隊
合計 698万3000人(うち日本本土に約300万人)

日本を二度と戦争の出来ない国家にすること──それがアメリカの日本占領の目的でした。
執拗な「復讐戦」をされることは、アメリカ人にとって脅威でした。
そのための手段が、「日本の民主化」であり「日本人の思想改造」でした。

「骨の髄まで民主化してやろうじゃないの」というのが、
当時、占領軍の間で流行した「ジョーク」だったそうです。

マッカーサーに日本経済に関する責任はいっさいないとされ、
最初の頃は、飢えた人々が大勢苦しんでいても、GHQは何の手も打つことはありませんでした。
「日本人の消滅」がアメリカの目標でした。

ユダヤ人を絶滅しようとしたナチス・ドイツと、
日本人を消滅させようとしたアメリカ合衆国は、
西洋キリスト教文明の持っている2つの顔だったのだと思います。

もっとも、朝鮮戦争の勃発と、
アジアにおける共産主義勢力の拡大とが、
アメリカの日本占領計画を根本から変えることになり、
日本民族は存続することが許されました。

占領が開始されるとすぐに、「日本的なもの」はすべて間違っているとされ、
戦前の社会体制と封建的価値観の破壊を通して、
日本人の「精神的武装解除」が図られました。

また「世論操作」として、
「ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム」War Guilt Information Program(WGIP)が実行されました。
日本人に「戦争への贖罪意識」を植え付けるための「洗脳計画」です。

第二次世界大戦は「デモクラシー対ファシズム」の戦いであり、
日本の戦争は「侵略戦争」だったとされました。

日本の軍国主義者がいかに残虐であったか、
軍国主義者たちがいかに国民を騙していたか、
一般の日本国民に戦争の惨禍や塗炭の苦しみを与えた責任は、
軍国主義者や超国家主義者にあるということ──
それらが日本国民の意識・無意識に刷り込まれました。

そう、すべての「悪」を日本の軍国主義に押し付ける一方で、
「アメリカの責任」がきれいに消されたのでした。

アメリカ占領軍が占領目的の遂行のために用意した強力なツールがあります。

日本国憲法
東京裁判
「太平洋戦争史」
(GHQ原作の「偽史」)

の3つがそれです。

日本国憲法はたった5日で作られたことが、いまではわかっています。
GHQに流れ込んでいたニューディーラーや共産主義者たちが、
彼らのファンタジーを盛り込んで日本国憲法を作りました。

そもそも占領中の国家の憲法を作るなど、明らかに占領権の濫用であり、
ハーグ陸戦条約等の「国際法違反」です。

日本国民はアメリカから、国際法違反の「憲法」を一方的に与えられたのです。

「東京裁判」(極東国際軍事裁判)は、
「ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム」のショー・ケースでした。

新聞・ラジオは、GHQの価値観に沿った形で毎日これを報じることを、
GHQに強制されていました。

こうして6年7ヶ月の占領期間を通じて、日本人の「洗脳計画」は完了しました。

悔やまれるのは、日本が再独立した時点で、
占領軍によって歪められた歴史観・価値観を廃棄すべきだった、ということです。

それは決して「戦前に戻ること」を意味しません。

しかし、それは実現しませんでした。
それほど6年間を超える「洗脳」の効果は絶大だったということでしょう。

アメリカは日本を「植民地」にはしませんでしたが、
日本国民の思想改造と社会改造により、
「条約締結」という「平和的手段」で、
日本の国土の自由な利用を可能にし、
日本人の「富」をアメリカのために継続的に支出させることに成功しています。

より「ソフトな」形で行われる「新植民地主義」をアメリカは発明した、
と言えるかもしれません。

日本人は敗戦の結果を──つまり、「見えない銃口を突きつけられた」新秩序を受け入れ、
その状況の中で、みずからの生活を再建し、
国家の再興に邁進するほかありませんでした。

これらの歴史的事実を日本人の「一般教養」とすることによって、
日本の諸問題に解決の道を指し示すことができるようになると思われます。

戦後70年を迎える今こそ、
日本国民はこのアメリカによって歪められ、消された、
日本歴史を取り返すべきだと思います。

以上がこれから私が取り上げていくテーマの「見取り図」です。
次回から、もう少し詳しく掘り下げて述べていこうと思います。


《参考文献》
『閉ざされた言語空間』江藤淳(文春文庫)
『GHQの検閲・諜報・宣伝工作』山本武利(岩波現代全書)
『アメリカの鏡・日本』ヘレン・ミアーズ(メディアファクトリー)